アダルトチルドレンの相談を受けていると多くの人が「生きづらい」と言います。
現代はただでさえ生きづらい世の中ですがアダルトチルドレンは特にそう感じやすいのです。
その理由の一つに脳の柔軟性が考えられます。
アダルトチルドレンの脳は機能不全家族のような過酷な環境を生き抜くために、他の子供よりも早く成熟していることが多いです。
あなたも「精神的に早く大人になった」という感覚を持っているかもしれません。これは脳の成長が早かったからです。
しかしそれが大人になった後に脳の柔軟性の低下という悪影響を及ぼし、生きづらいという感覚につながるのです。
環境が脳に及ぼす影響
子供時代の過酷な環境やストレスが脳の成熟を早めることの科学的根拠も存在します。
子供のストレスと脳の関係についてデータを得ることの出来る研究としては、オランダのラドバウド大学が長期に渡り継続しているものがあります。
感情や判断、社会性に影響を与える脳部位の成熟が早い
この研究は1998年に1歳児とその親について開始されたものです。その中で親や友人との相互作用について調べられています。
この結果について2018年に発表された論文によると、幼児期(0歳から5歳)に病気や親の離婚などのストレス体験をした子供の脳をMRIでスキャンしたところ、前頭前野、扁桃体、海馬の成熟が早いことが分かりました。
これらの領域は感情や判断、社会性に影響を与える部分です。
(※反対に青年期(14〜17歳)にストレスを受けた場合には成熟の遅さが見られますが原因については不明です)
環境に適応するためにアダルトチルドレンの脳は早く成熟した
なぜ子供時代の過酷な環境が脳の成長を早めるのかというと、進化生物学の観点から説明ができます。
ストレスの多い環境では早く成長したほうが適応しやすく、生存に有利なのです。いつまでも未熟なままでは生き延びることができないからです。
そのため子供時代にストレスを受けると、他の子供に比べて早く脳内の社会性や感情に影響する部位が成熟するのです。
機能不全家族で育ったアダルトチルドレンの精神的な成長が早いのもこのためです。
成熟した脳がアダルトチルドレンの生きづらさにつながる
脳の成熟が早いことは一見すると良いことのようにも思えます。
しかしこれには大きなデメリットがあります。
それは早く成熟した脳は柔軟性が失われる可能性があるということです。
そのため大人になった後の環境にうまく対応が出来なくなってしまうのです。
このような脳内の出来事がアダルトチルドレンの生きづらさを生み出す一つの要因といえます。
たとえば「私は何をやってもダメな人間」という考えに固執して「他の考え方はできないだろうか?」とならないのも脳に柔軟性がないことの表れです。
アダルトチルドレンの「生きづらい」は変えられる
では脳の成熟が早かったアダルトチルドレンはこれからもずっと生きづらさを抱えたままなのでしょうか?
そんなことはありません。
私はアダルトチルドレンのカウンセリングを始めたときから何年も口癖のように言っているのですが「脳には可塑性」があるのです。
つまり変わろうと思えば変われるということです。(変わろうとしなくても変わりますが、それは悪い方への変化である可能性もあります)
これはいくつもの研究で証明されていることです。
逆に脳が変わらなかったとしたらそれこそ脳科学上の大発見になります。
アダルトチルドレンのあなたが今は生きづらいと思っていても、それは今だけの話なのです。心配しなくて良いのです。
参考文献:Anna Tyborowska, Inge Volman, Hannah C. M. Niermann, et al. Early-life and pubertal stress differentially modulate grey matter development in human adolescents. Scientific Reports volume 8, Article number: 9201 (2018)