アダルトチルドレン(AC)の中には「恋愛ができない」という人が少なくありません。
異性と出会っても、そういう気持ちになれなかったり、自分でブレーキをかけてしまったり、仮に付き合うことになっても健全な関係を築けなかったりします。
この原因の多くは、幼少期に機能不全家族で育ったことの悪影響にあります。
しかし、その一方で、アダルトチルドレンであっても、満足度の高い恋愛ができている人もいます。
そこで今回は、アダルトルドレンが恋愛できない理由と、アダルトチルドレンでも恋愛がうまくいく人の特徴、そして改善の方法について、研究などを踏まえて解説します。
アダルトチルドレン(AC)が恋愛できない理由
アダルトチルドレンが、恋愛できない背景には、幼少期に受けた心の傷が深く関係しています。
本人の努力不足や性格の問題ではなく、安心して人とつながる経験が不足していたことが影響しているのです。
ここでは、アダルトチルドレンが、健全な恋愛関係を築きにくくなる主な理由を5つ解説します。
1. 自己肯定感の低さ
アダルトチルドレンは幼少期に親から十分な愛情や肯定的な言葉を受け取っていない人が多いです。
親が子どもの成功や努力を認めず、批判や無視を繰り返すような家庭環境で育つと、自分の価値を認識することが難しくなります。
そして「自分は愛される価値がない」「自分には欠陥がある」という否定的な思い込みが根付いて自己肯定感が低くなります。
恋愛では自分をさらけ出し、信頼関係を構築することが求められます。しかし自己肯定感が低い人は「本当の自分をさらけ出したら愛されない」と不安になります。
このように自分を過小評価して相手の好意を疑ったり、自分を守るために距離を取ろうとしてしまうので安全な恋愛ができないのです。
2. 親密さへの恐怖
アダルトチルドレンは家族との関係が不安定だったため、親密な関係そのものに恐怖を抱くことがあります。
例えば、親が過干渉であったり、逆に放置されることが多かった場合、近しい人との関係が心理的負担になることがあります。
「誰かに近づきすぎると自分の弱さや傷が見えてしまう」「深い関係を築くと相手に裏切られるかもしれない」という恐れが生じるのです。
そのため、相手がどんなに好意的であっても、自分から距離を置いたり、感情を閉ざしてしまうのです。
3. コミュニケーションの難しさ
アダルトチルドレンは家庭内で健全なコミュニケーションのモデルを観察する機会がなかった人が多いです。
例えば、親が感情を抑え込むタイプだった場合、自分の感情を表現する方法を学べず、結果として「自分がどう感じているのか分からない」「自分の意見を言うのが怖い」といった状況に陥りがちです。
また、親の機嫌をうかがいながら生活していた場合、相手を怒らせないようにすることばかりを優先し、自己主張ができなくなるケースもあります。
このような背景があると、恋愛の場でも自分の気持ちを素直に伝えられず、すれ違ったり、誤解が生じたりすることが増えます。
さらに、相手が不満を感じた際にもその理由を理解できず、関係が悪化することもあります。
4. 完璧主義や理想の追求
アダルトチルドレンの中には自分が経験してきた不安定な家庭環境を補うために、恋愛に理想を追い求める人がいます。
「恋愛は全てを満たしてくれるものであるべき」「相手は完璧でなければならない」といった思い込みが強い場合、現実の相手がその基準を満たせないと感じた時に強い失望感を抱きます。
また、自己肯定感が低いために、自分の理想の相手を手に入れることで自分の価値を証明したいという心理が働く場合もあります。
しかし、現実の恋愛は相手も同じく人間ですから欠点や弱点があることが普通です。
この理想と真実のギャップに気づいた時、関係を維持するモチベーションが急激に低下することがあります。
5. 過去の傷の影響
アダルトチルドレンは親からの暴言や暴力により心理的な傷を抱えていることが多いです。
そして、このような過去の傷が恋愛の場で再び浮き彫りになる場面は多々あります。
例えば、恋人の態度が少し冷たく見えただけで「また拒絶されるのではないか」と感じてしまったり、相手の些細な言動に過剰に反応してしまうことがあります。
このような負のループに陥ると、恋愛関係を安定して築くのが非常に難しくなります。
ACが恋愛できない原因には非言語シグナルの影響もある
上記の5つは、アダルトチルドレンが恋愛できない理由として、よく言われるものです。実はこの他にも、あまり知られていませんが、影響を与えるものがあります。
それは親が発していた「非言語シグナル」です。
非言語シグナルとは、表情や声のトーンといった、言葉以外で伝わる情報です。同じ言葉でも、笑顔で言うのか、無表情で言うのかによって、相手の受け取り方は大きく変わります。
親が、差別的な発言をしなくても、非言語シグナルでそれを出すと、子供に偏見を植え付けます。これがアダルトチルドレンが、まともな相手を選べなくなる原因になります。
誰と仲良くしたいかを決めるもの
ワシントン大学の研究チームが、4歳児と5歳児に、ビデオを見せる実験行いました。
このビデオの中で、出演者の1人が、別々の2人(仮にAさんとBさんとします)に、挨拶したり、オモチャを渡します。
話し掛ける内容は同じですが、態度は変えます。Aさんには笑顔で優しく接し、Bさんには冷たく接します。
そして、ビデオを見終わった子供たちに「AさんとBさんのどちらと仲良くしたい?」と質問をしたら、7割近くが「Aさん」と答えました。
非言語シグナルから、仲良くすべき人間と、仲良くすべきでない人間を分ける情報を受け取ったということです。
アダルトチルドレンが健全な恋愛相手を選べない理由
特に、アダルトチルドレンは、子供時代に家族の顔色を敏感に察知していたことが多いですから、非言語シグナルの影響を受けやすいです。
相談に来ている人から「きちんとした職業の人が苦手」と、言われることがあるのですが、この影響なのです。
子供をアダルトチルドレンにしてしまう親は、きちんとした大人に対して、偏屈な態度を取ることがあります。役所や、お店などでの振る舞いを見ていれば、分かると思います。
そういった姿を見て育つと、恋愛対象を選ぶときの基準がズレていきます。
「酒もギャンブルもやらないような面白みのない男と付き合うな」と言われていなくとも、アダルトチルドレンは、そういったタイプとは恋愛をしません。
これは、親から非言語シグナルを受け取り続けていたために、誠実な相手に対して恋愛感情を持ちにくくなっているからです。
ちなみに、先ほどの実験では、冷たい態度を取られていたBさんと同じシャツを着た、Cさんに対する評価も下がることが分かっています。同じグループに属するというだけで、悪い評価が伝染するのです。
親から「公務員や一流企業に勤めている人は金に汚い」といった価値観を受け取ると、同じカテゴリに属する全員にその影響が及ぶということです。
そして、恋愛をするときも、こういった相手を避けて、ダメな相手を選ぶのです。
アダルトチルドレン(AC)でも満足な恋愛が出来ている人の特徴
ここまで説明したように、子供時代の家庭環境が大人になった後の恋愛に悪影響を与えているせいで、アダルトチルドレンの恋愛はうまくいかないのです。
一方で、決して良くはなかった家庭環境で育ったにも関わらず、満足度の高い恋愛が出来ている人がいることも、臨床心理学の専門家であるジェラルド・マッカーシー博士らの調査で分かっています。
この調査では、家庭環境、親からの愛情、恋愛関係に関する聞き取りを行っています。
それらの内容を分析したところ、自分の心を整理して語れる人は、たとえ機能不全家族で育っても、良い恋愛ができることが分かりました。
「心の一貫性が」がある人は良い恋愛をしている
心を整理して語れるとは、因果関係や感情的影響を整然とした形で、表現できるということです。
たとえば「情緒不安定な親に育てられたけれど、その体験があったから自分は人間関係について学び、恋愛関係を上手に築けるようになった」と語れるということです。
このような表現ができる状態を「心の一貫性(Coherence of Mind)」があるといいます。
そして、これがある人ほど良い恋愛をしているのです。
心の一貫性は健全な「内的作業モデル」を形づくる
なぜ心の一貫性がある人は、良い恋愛ができるのでしょうか?
それは、心の一貫性は健全な「内的作業モデル」を形づくるものだからです。内的作業モデルとは、親子関係などを通じて形成される認知の枠組みです。
たとえば、親に愛されなかった人が、新たに出会った他者に対し「あの人も愛してくれない」と感じたとしたら、それは否定的な内的作業モデルを持っているといえます。
なぜ、否定的な内的作業モデルを持ってしまうかというと、因果関係や、感情的影響を曖昧に捉えているからです。
「親が愛してくれなかったのは親がそういう性格だから? あれ?私がダメな子だったからかな? 私が他人を愛せないのはなんでだっけ?」と混乱しているのです。
研究でも、良い恋愛ができていない人は、このような曖昧な語り方をすることが分かっています。逆にいうと、心の一貫性を持っている人は、健全な内的作業モデルを持っているということです。
そして、それが自分自身について語るときも、理路整然とした表現として出てくるのです。
アダルトチルドレンが健全な恋愛をするために
「心の一貫性」と「内的作業モデル」は、双方向の関係です。
心の一貫性が、健全な内的作業モデルをつくり、健全な内的作業モデルを持つ人は、心の一貫性が強まるのです。
ですから、恋愛ができないというアダルトチルドレンでも、心の一貫性を手に入れれば変われるということです。
少なくとも、現時点で「アダルトチルドレンであることが恋愛に影響を及ぼしている」と気づいているのですから、第一歩を踏み出しているとはいえます。
まずは、自分に向き合い、過去の体験に伴う感情を整理することが重要です。恋愛の場面でモヤッとしたら、言語化する習慣を身につけましょう。
そして「あの体験は嫌だったけれど、それによって今は客観的な視点を手に入れられた」といったように、否定的な側面と肯定的な側面を統合し、現在の自己形成にどのように影響したかを整理して語れるようになれば、健全な恋愛ができるようになるはずです。
- Skinner, A. L., Meltzoff, A. N., & Olson, K. R. (2017).“Catching” social bias: Exposure to biased nonverbal signals creates social biases in preschool children.
- McCarthy, G., & Maughan, B. (2010).Negative childhood experiences and adult love relationships: The role of internal working models of attachment.


