カウンセラーでも勘違いしている人が多いのですが回避依存症と回避型愛着スタイルは似ていますが違うものです。
この2つを区別せずに彼氏や好きな人との恋愛を進めようとすると大失敗します。
「回避」の特徴を持つ相手と恋愛中の人はこの違いをきちんと理解してください。そうしないとせっかく上手くいくはずだった関係が終わってしまう危険があります。
最初に言っておくと世の中で「回避依存症」とされる人の9割以上は単に回避型の愛着スタイルを持っているだけです。
「回避依存症」と「回避型愛着スタイル」の違い
回避依存症と回避型愛着スタイルの違いについて説明します。
回避型愛着スタイルとは
人間は他者とどのような絆を形成しようとするかという「型」を持っています。これを愛着スタイルといいます。
他者と親密になることを恐れたり、面倒に感じる人が持っているのが「回避型愛着スタイル」なのです。単に「回避型」と呼ばれることもあります。
回避型愛着スタイルの他には、依存しずぎてしまう人が持つ「不安型愛着スタイル」と、バランスの取れた人が持つ「安定型愛着スタイル」があります。
多くの人が程度の差こそあれ不安型か回避型の傾向を持っているというのがカウンセリングをしている中で感じることです。
完全に安定した愛着スタイルを持っている人のほうが少ない気がします。
そしてこれら愛着のバランスが偏り過ぎた状態を回避型愛着障害や不安型愛着障害といいます。
回避依存症とは
次に回避依存症について説明します。
実は回避依存症の明確な定義はありません。なぜなら一般の書籍によって言及された造語(俗語)だからです。
なので専門家によってもその意味するところが異なることもあります。
しかしきちんと理解している人の間では「回避型愛着スタイルを持つ人の中でも特殊かつ強烈なタイプが回避依存症」という共通認識はあります。
回避依存症は回避型に比べるとより深刻で、対応を間違えるとそのまま永遠に音信不通となる可能性も高いです。全員ではありませんが恋愛のパートナーに対し何らかの悪意を持っていることもあります。
それと勘違いしないでほしいのですが、回避型愛着スタイルの最上級が回避依存症ではありません。
確かに回避依存症が持つ回避の傾向は強いですがそれだけではないのです。そこにさらに特別な条件が加わるのです。どのような条件かは個々に違いますから定義することはできません。
より詳しい説明は「回避依存症とは」のページをご覧ください。
(余談ですが不安型の愛着を持つ人に特別な条件が加わると恋愛依存症となることが多いです)
恋愛における対応方法も異なる
そしてこれが非常に重要なことなのですが、回避依存症と回避型愛着スタイルでは恋愛における対応方法が異なります。
それにも関わらず本やネットではこの2つを混同して説明していることが多いです。単に回避型の傾向があるだけの人まで回避依存症として説明してしまっているのです。
ほんの少し回避型の傾向があるだけの人に回避依存症と同じ対応をしてしまったら失敗します。
よくある間違いとしては音信不通になったときの対応があります。
音信不通になった場合には放置したり冷却期間を置いて待つことが大事とアドバイスされることが多いです。
たしかに回避依存症の相手に対しては正しいといえるでしょう。(そもそも本物の回避依存症は去ってしまったら戻ってくる確率が非常に低いです)
しかし回避傾向があるだけの場合は連絡したほうが良いこともあるのです。
なぜなら追いかけてくれるのを待っていることもあるからです。それによって愛されていると確認したい回避型もいるのです。
当カウンセリングルームに相談に来る方でも、放置すべしというアドバイスを信じずに連絡していれば関係が切れずに済んだのに…というパターンも少なくありません。
回避型愛着スタイルとの恋愛をうまくいかせたい場合は「回避型愛着障害の男性の恋愛における特徴&正しい接し方」の記事をご覧ください。
回避依存症と勘違いしやすいその他のもの
彼氏や好きな人と連絡がつかなくなったり距離を置かれたときに、ネットでいろいろと検索をすると思います。
そこで頻繁に出てくるワードが「回避依存症」です。
そこに書かれた特徴が少しでも当てはまると「私の彼氏は回避依存症なんだ」と思い込みがちです。しかしそれは間違いである確率が高いです。
ここまで回避依存症と回避型愛着スタイルは違うものということを説明してきましたが、実は他にも似た特徴を持つものはあります。
そしてそれらを回避依存症と勘違いしている女性も非常に多いです。いくつか例を挙げておきます。
ダークトライアド
ダークトライアドとは以下の邪悪な3つの性格傾向のことです。
- ナルシシズム:自分は特別扱いされるべき存在という思考を持つ
- マキャベリアニズム:自分の利益のために他人を陥れる
- サイコパシー:他者への共感力が低く罪悪感を持ちにくい
ここにサディズム(加虐嗜好)を加えてダークテトラッドと呼ぶこともあります。これらは環境要因よりも生得的な要因が強いとされています。
ダークトライアドは恋愛における特徴が回避依存症と似ている部分が多いです。
私の個人的な意見ですが、ダークトライアドを持つ人が強い回避傾向を持ったときに、回避依存症になる可能性が高いのではないかと思います。
そう考えると、回避依存症のサディスティックな行為や、罪悪感を覚えていなそうに見える行動について非常に納得しやすいのです。
そもそも本気じゃないだけ
頻繁に遊びに行ったり、体の関係を持っているのに恋人同士にはなっていないときに、相手の男性のことを回避依存症と勘違いしてしまうことがあります。
しかし単に相手が本気ではないだけかもしれません。
遊びの相手に対して男性は「過去の恋愛で女性恐怖症になっている」とか「縛られるのが苦手」などと言い訳をすることがあります。気が向いたときだけ連絡したり会おうと言ったりもします。
これらの特徴は回避依存症のようにも見えますから勘違いしてしまうのです。
女性本人としても遊ばれていると認めるよりも回避依存症と思ったほうが精神的に安定するので、そう思い込むバイアスもかかります。
過去の恋愛に傷ついた自分が大好きな男
回避依存症(と思われる)相手との恋愛について相談に来る女性が「彼は過去の恋愛のトラウマで女性と向き合えないのです」と言うことがあります。
しかしさらに詳しく話を聞くと、本当に恋愛のトラウマを抱えている男性が女性にそんな積極的な態度を取るだろうか?と思うことが多いです。
確かに彼らは元カノに未練があったり、傷つけられたりしたことはあるかもしれません。しかしそれが次の恋愛に大きな影響を与えるほどなら女性に積極的にはなれません。
彼らは過去の恋愛で傷ついていることがカッコイイと勘違いしているだけなのです。なので自分からさり気なくそれをアピールします。
そして不安定な愛着を持つ女性はそれに騙されて「回避依存症の可愛そうな彼」と思ってしまうのです。
ここで挙げた以外にも人と深く付き合うことを恐れるコミットメント恐怖症などがあります。こちらも愛着に原因があるとされています。
なぜ「回避」の間違えた情報が広まっているのか?
愛着に関する研究は海外のほうが進んでいるのですがそこで発表される研究論文は「回避型愛着スタイル(回避傾向)」についてのものが圧倒的に多いです。
(回避依存症は定義できないのでまともな研究対象になり難いので当然ですが…)
しかし日本では回避依存症の特徴ばかりが本やネットで説明されます。
これは過去に出版された恋愛依存症や回避依存症の書籍を参考に書かれたネット上の記事が何度も焼き直しされ続けるうちに、それが多くのカウンセラーの基礎知識のようになってしまったためと考えられます。
回避依存症の種類としてよく言及される「脱走者タイプ、独裁者タイプ、ナルシストタイプ、搾取者タイプ」などもこれらの書籍から広まった言葉です。
この4種類に限定できるわけではないのですが非常に分かりやすい分類だったために今日にいたるまで使われ続けているのです。中にはこの4パターンが全てであるかのように説明しているカウンセラーもいます。
このような過程の中で回避依存症の特徴が回避型愛着スタイルの特徴としても紹介されるようになってしまったのです。
そのため回避型についての本当の情報が非常に少ないうえに間違って広まっている状況となっているのです。
相談に来る女性の彼氏のほとんどはただの回避型
ここまで説明してきた通り、あなたが「彼氏は回避依存症」と思っていてもそうである可能性は非常に低いです。
単に回避型愛着スタイルを持っているだけの可能性が高いです。
なので回避依存症のための対応法を取り入れてもその恋愛はうまくいかないでしょう。
さらにいうなら回避型愛着スタイルを持つ人の中でもその強さによって対応は異なります。
回避依存症なのかどうかという定義に当てはめることに意味はありません。それが分かったところで正しい対処法などネット上には転がっていないのです。
言葉の意味に拘らずに個々の特性に合った手法でアプローチすることが大切です。
このサイトでも散々、回避依存症を振り向かせることの難しさを説明しています。
しかし「彼氏が回避依存症だと思う」と相談に来る女性の彼氏の特徴を聞いてもそのほとんどは単なる回避型なのです
たとえあなたが好きな人に距離を置かれても希望を捨てる必要はありません。
あなたの恋愛がうまくいっていないのは違うモノを回避依存症と思い込んで対応してしまっているからです。