世の中がつまらないと思う原因。「根源的世界観」を形づくるものは何か?

カウンセリング予約
アダルトチルドレン、恋愛依存症、回避依存症、共依存、愛着障害の相談・カウンセリングを行っております。
対面・オンライン・電話で対応いたしております。

現代は刺激的なコンテンツや、興奮するアクティビティを気軽に体験できる時代です。

それにも関わらず、「世の中がつまらない」と感じる人も少なくありません。

確かに日本社会の閉塞感や暗い見通しを考えると、これからもっと楽しいことが増えるという期待は持ちにくいかもしれません。

しかし、そんな環境でも世の中や自分の未来にワクワクしている人もいます。

世の中がつまらないと感じる人と、楽しいと感じる人にはどんな違いがあるのでしょうか?

世の中を認識するための土台「根源的世界観」

私たちが世の中をどのような場所と認識するかの土台となる信念を「Primal World Beliefs」といいます。

日本語になっていませんが、訳すなら「根源的世界観」といったところです。

たとえば、「世界は基本的に善いものだ」「世界は危険で満ちている」「世界は魅力的で面白い」といった、世界の性質に対する感覚的な理解を指します。

この概念を体系化したのは、心理学者のジェレミー・D・W・クリフトンたちです。

クリフトンらは、世界中の宗教文書、小説、映画、演説、さらにはSNSの投稿などを分析し、人々が「世界は~だ」と述べる際の表現から、26の主要な信念の軸を抽出しました。

これらの信念は、「世界は良いか悪いか」「世界は安全か危険か」「世界は魅力的か退屈か」「世界は生きているか機械的か」といった形で分類されています。

こうした世界観は、人の性格や価値観、他者への信頼感、さらには幸福感やメンタルヘルスにも強く関連していることが研究から分かっています。

親子間の接し方が根源的世界観の形成に影響する

「根源的世界観」は幼少期から成年期の経験を通じて形成されます。

特に重要なのが身近な大人(親や養育者)との間で、どのような体験をしたかということです。

デューク大学のジェニファー・E・ランスフォード教授らが、親の育て方と、根源的世界観の関係を調べた研究があります。

この研究では、2008年から2022年まで13年間にわたり収集されたデータが使用されました。

対象となったのは、アメリカやイタリア、タイなど8か国の子供たちとその両親です。

研究の開始時点で子供たちは8歳前後であり、22歳になるまで年度ごとに追跡調査されました。研究では、まず、以下の要因が8歳から16歳までの間に測定されました。

  • 親の温かさ
  • 躾の厳しさ
  • 心理的コントロール
  • 自主性が尊重されているか
  • 居住地域の危険度(治安)
  • 家庭の社会経済的地位

これらの要因は、子供本人と両親の両方からの報告をもとに測定されました。

そして、子供が22歳になったときに、以下の「根源的世界観」を測定しました。

  • Good:世界は良いところか
  • Safe:世界は安全か
  • Enticing:世界は魅力的か
  • Progressing:世界は進歩しているか
  • Abundant:世界は豊かか

研究の結果として、親の温かさが、「Good」「Safe」「Encting」という3つの根源的世界観を強く予測することが明らかになりました。

つまり、幼少期から青年期にかけて親からの温かい関わりを受けて育った人は、成人後に「世界は良い」「安全である」「魅力に満ちている」と感じやすくなる傾向があったのです。

また、自主性の尊重は「Enticing」な世界観の形成に僅かながら正の影響を与えることが分かりました

一方で、居住地域の危険性や社会経済的地位は、いずれの「根源的世界観」とも強い関係を示しませんでした。

なぜ親の育て方が世の中の見え方に関係するのか?

なぜ親(養育者)の育て方が根源的世界観に影響するのでしょうか?

それは子どもが世界と出会う最初の「窓口」が親だからです。

私たちは生まれてすぐに社会や世界の全体像を見ることはできません。

代わりに、日常的に最も長く関わる存在の親を通じて、世界がどんな場所かを学び取っていきます。

たとえば、親が子どもに対して温かく接し、話を丁寧に聞き、失敗しても責めずに支えてくれるような態度を取っていると、子どもは「この世界は安全で、優しい場所だ」と感じるようになります。

逆に、親がいつも怒鳴ったり、拒絶したり、愛情を条件付きで示したりすると、「世界は冷たくて怖い場所だ」と思うようになります。

このように、親との関係は世界のルールや傾向を学ぶ「基礎データ」として機能します。

特に幼少期から思春期にかけての時期は、脳の可塑性が高く、環境からの影響を強く受けやすいため、親の態度や家庭内の空気感が、子どもの根本的な世界の見方に深く染み込みやすいのです。

つまり、親の態度は子どもの「世界との出会い方」を決定づけ、それがそのまま根源的世界観の土台となって、成人後の人生観や人間関係のあり方にも影響していくということです。

ちなみに、根源的世界観は成人後も変化するものですから、今現在、「世の中がつまらない」と思っていても、諦める必要はありません。

日常的に取り入れる情報や、物事の見方を変える意識を持つことで、少しずつ変化していくとされています。

参考文献:Jennifer E. Lansford, Laura Gorla, et al. (2025). Predictors of Young Adults’ Primal World Beliefs in Eight Countries.

ヘリコプターペアレントの特徴と悪影響