ヘリコプターペアレントの特徴と悪影響

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子供を管理し過ぎる保護者をヘリコプターペアレントと呼びます。

近年このヘリコプターペアレントによる悪影響が様々な調査で判明しています。

低い自己肯定感や人間関係のトラブルはよく知られていますが、直近の研究では「心理的特権意識」や「FOMO(取り残されることへの不安)」との関連も分かっています。

そしてこれらは当ブログで何度も説明している回避依存症との関連もあるように思います。

ヘリコプターペアレントとは?

ヘリコプターペアレントとは過保護で過干渉な親の事です。

ホバリングするヘリコプターのように子供の頭上を旋回し、あれこれと口出しする姿からアメリカで名づけられました。

似た言葉として「カーリングペアレント」があります。こちらは子供に先回りして何でもやってしまう親を、ブラシで擦ってストーンをコントロールするカーリングに例えています。

どちらも子供の情緒的な発達や人間関係のスキルにネガティブな影響を及ぼします。

ヘリコプターペアレントの特徴

ヘリコプターペアレントの具体的な特徴として以下の行動が上げられます。

  • 子供の遊びや趣味、習い事など本人が決めるべきことをに口出しして誘導する
  • 勉強やスポーツの成績を過剰に管理する
  • 子供に失敗させないために過剰なサポートをする
  • 子供同士で解決可能なレベルのトラブルにも介入する

これらの行為を「ヘリコプターペアレンティング」と呼びます。このような親がモンスターペアレントとなることもあります。

子供が大人になった後も続く

ヘリコプターペアレントの異常な行動は子供が低年齢のときだけではなく、中学生や高校生になった後も続くことがあります。

それどころか社会人になってまで親がしゃしゃり出てくることさえあります。

会社の欠勤の連絡を親がしてくることなどはその一例でしょう。酷いケースでは上司への文句を親が言ってくることもあります。

ヘリコプターペアレントになる原因

ヘリコプターペアレントになる原因の一つとして親自身の実現されていない理想があります。

例えば学歴コンプレックスを持っている親は子供に良い大学に行かせることで、それを克服しようとします。そのために子供の学習を口うるさく管理するのです。

また分離不安が原因となることもあります。分離不安とは愛着を持つ相手と離れることに対する過剰な脅えです。

子供が自分から離れていくことを恐れている親はヘリコプターペアレントになる可能性があります。

ヘリコプターペアレントが子供に与える悪影響

ヘリコプターペアレントが何でもやってしまうことで子供は自立心や責任感が育ちません。

また傷つくことを恐れ挑戦することを避けるようにもなります。それどころか自分が何をしたいのかさえ分からなくなることもあります。

時には問題行動を起こすこともあります。

フロリダ州立大学のミン・クイ博士らの研究ではヘリコプターペアレントによる育児がアルコール依存やネット依存につながることも分かっています。

またうつ病や不安症の予測因子ともされています。

ヘリコプターペアレントに育てられた子供は人間関係にトラブルを抱えやすい

ヘリコプターペアレントに育てられた子供は成人後に人間関係でトラブルを抱えることがあります。

親の庇護の及ばない社会に参加した途端に戸惑ってしまうのです。

人間関係のトラブルを抱える傾向が高い

マカオ科技大学のティン・ニー助教たちがヘリコプターペアレントについて中国の大学生500人以上を対象に行った調査があります。

中国は1979年から2014年まで一人っ子政策が行われていたため、この時代の子供達は親のリソースが自分だけに集中している可能性が高いといえます。(対象者の76.8%が一人っ子でした)

結果を分析したところヘリコプターペアレントの元で育った学生ほど人間関係のトラブルを抱える傾向が高いことが分かりました。

心理的特権意識を持ちやすい

この調査では「心理的特権意識(Psychological Entitlement)」についても調べています。

心理的特権意識とは「自分は特別な存在である」「社会からの利益を享受する権利が他の人よりもあるはずだ」という考え方のことです。

ヘリコプターペアレントによる育児と心理的特権意識の高さにも相関があることが分かりました。

そしてこれによりさらに人間関係に対立が生じやすいことも判明しています。

FOMO(取り残されることへの不安)を持ちやすい

友達が自分だけを除け者にして楽しい体験をしているのではないか?新しい情報にキャッチアップできていないのではないか?という不安のことを「FOMO(Fear Of Missing Out)」と言います。

日本語では「取り残されることへの不安」などと訳されます。

世界的にもミレニアル世代以降でこの不安を抱えている人の割合が高まっており、それがスマホ、SNSへの依存につながっています。

ティン・ニー助教たちの調査ではヘリコプターペアレントに育てられたことと、FOMOの持ちやすさに相関があることも分かっています。

それまで親に依存していたのが、大学生となり友達への依存へと変わり、相手の行動を逐一確認してしまうことが原因ではないかとされています。

回避依存症とヘリコプターペアレント

ここからは私の個人的な見解となりますが、ヘリコプターペアレントは回避依存症にも関係している気がします。

「自分は特別」と「自分はできない」という矛盾した心理

回避依存症の中でも搾取タイプやナルシストタイプは「自分は特別扱いされるべき人間である」という心理的特権意識を持っていることが多いです。

これは「彼氏が回避依存症だと思う」といって相談にくる女性の話でよくあることです。

その一方で、仕事において同僚や上司とうまくいかずに自己効力感を持てないこともあります。

自分は価値のある人間と思っている一方で「自分はできる」という自信を持てないという矛盾した心理を持っているのです。

これはヘリコプターペアレントが育てあげる子供と同じタイプといえます。

甘やかすことで歪んだ自己肯定感を持たせ、さらに何でも代わりにやってしまったことで何も出来ない状態を作り上げてしまうということです。

息苦しさではなく力を奪われたことが回避の原因?

回避依存症とまでいかなくとも回避傾向を持つ人間は過保護で過干渉な親に育てられているケースは多いです。

その息苦しさがトラウマとなり親密な関係から逃げてしまうのが回避のメカニズムと説明されることが多いのですが…

息苦しさではなくヘリコプターペアレンティングによって力を奪われることが原因となっている可能性もあるかもしれません。

とはいえ回避依存症は皆さんが思っているほど多くは存在しないのですけれどね…。

<参考文献>
・Nie, T.; Cai, M.; Chen, Y. An Investigation of Helicopter Parenting and Interpersonal Conflict in a Competitive College Climate.
・Cui, M.; Allen, J.W.; Fincham, F.D.; May, R.W.; Love, H. Helicopter Parenting, Self-regulatory Processes, and Alcohol Use among Female College Students. J. Adult Dev. 2019, 26, 97–104.