アダルトチルドレンについての話題の中で「機能不全家族は8割いる」と言われることがあります。
私も最初にどこで聞いたのかは忘れましたが昔からよく見かける割合です。
この8割という数字はどこから来ているのでしょうか?
私の個人的な見解なので確定的なことは言えませんがアメリカのチャールズ・L・ウィットフィールド医師の書いた『Healing the Child Within(内なる子供を癒す)』という本の影響ではないかと思います。
その本の中で「十分な愛情をもって養育された子供の割合は5~20%で残りの80~95%は健全な人間関係を築くのに必要な養育を受けているとは言えないのではないか?(意訳:ibrain)」というようなことが述べられています。
1987年に出版された本ですが多くの心理療法家に読まれていますからきっとここから「機能不全家族は8割」というのが広まったのではないでしょうか?
完全に私の個人的な見解ですからもしかしたら違うかもしれませんが……。
機能不全家族の代表的な特徴である虐待・精神疾患・依存症の割合を調べれば分かるのか?
ところで本当に機能不全家族は8割も存在するのでしょうか?
いくつかの論文を探してみましたがそれを証明するエビデンス(科学的根拠)は見当たりませんでした。
機能不全家族ではなく幼少期の生育環境についてのアンケートはいくつかありましたがそれらの数字をみても虐待を受けていた子供の割合はそこまで高くありません。
機能不全家族の代表的な特徴としては虐待、親の精神疾患、アルコール依存症、ギャンブル依存症、などが挙げられます。
それぞれの割合は以下に示す通りです。
(※手っ取り早く得られる数字を使っていますので出典に共通性はありません)
児童虐待
虐待に関してWHO(世界保健機関)の資料では以下のような数字が出ています。
- 身体的虐待:23%
- 精神的虐待:36%
- ネグレクト:16%
- 性的虐待:18%(女) 8%(男)
ちなみに日本の児童虐待相談対応件数はおよそ16万件(H30年)ですが虐待があっても相談する割合がどれほどか不明ですので参考にはし難いところです。
精神疾患
日本人の5人に1人は生涯において何らかの精神疾患にかかると言われています。
アルコール依存症
アルコール依存症の割合は1%前後と言われています。
ギャンブル依存症
ギャンブル依存症者の割合は調査によっても異なります。
厚生労働省の2001年度の調査では4.8%、2017年度の調査では3.6%となっています。
これは減少しているのではなく調査方法が異なるため差が生じた可能性があります。
日本人のギャンブル依存症の割合は世界的に見ても非常に高いです。他の先進国では1%前後となっています。
これは気軽に行ける場所にパチンコ屋等の施設があることが原因と考えられます。
上記の何らかの問題が子育て中に起こる割合と考えるとさらに数字は下がりますから8割には到底及びません。
⇒アダルトチルドレンの子育て、自分の子供に連鎖させないために
機能完全家族は2割なのか?
今度は反対の視点から考えてみましょう。
つまり完全に機能している家族は2割なのか?ということです。
「機能完全家族」という言葉は存在しないのですが定義するとしたら「精神的にも経済的にも安定した親が愛情をもって適切な子育てをしている家庭」といったところでしょうか?
それほど難しいことではないように思えるかもしれませんが条件を満たす家庭は多くないかもしれません。
例えば過保護な親や教育熱心すぎる親がいたら「機能完全家族」とは言えないでしょう。
このような家庭では親の態度に一貫性がなかったり自分の意見を主張できない環境になっていることがあります。
表面上は子供を大切にしているように見えますから機能不全に陥っていても親子ともに認識することは出来ません。
ちょっとしたことがきっかけで子供がアダルトチルドレンになることもあります。
親がイライラしているときに発したその一言がトラウマとしていつまでも残るケースもあるのです。
分かりやすい機能不全家族の割合がどれほどなのかは不明です。
しかしアダルトチルドレンを生み出すリスクを孕んだ家庭が8割はいると考えるのはそれほど突飛なことではないと思います。