第一印象は相手の脳に強く刻まれます。初対面のときの数秒のイメージが何年も残るともいわれます。
特に性格の悪い人間と思われてしまった場合は印象が変わりにくいです。なぜなら人間は悪い特徴ほどその人物の本質を表現していると考えるバイアスを持っているからです。
会話中の表情や姿勢、身だしなみがほんの少し不自然なだけでも悪い印象を持たれることもあります。それくらい初対面時の情報は印象形成に大きな影響を与えるのです。
今回は最初の印象がどれほど強く影響するかということと、一度作られてしまった最悪な印象を変えるにはどうすれば良いかということについて説明します。
第一印象が性格の判断に与える影響
トルコのビルケント大学が見知らぬ人の写真を見たときの第一印象が、数ヵ月後に直接会ったときの性格の判断にどれくらい影響するのか?ということを実験で調べました。
手順:写真を見る→数ヵ月後に会う
この実験では笑顔と無表情な顔の2パターンで撮影された4人の女性の写真が55人の参加者に見せられました。
そしてその女性と友達になりたいかどうかや、好感が持てるかどうか、良心的かどうかといったことを評価しました。
それから参加者ごとに1ヶ月から6ヶ月の間を置いて写真の人物と直接会いました。このとき10分間のクイズと10分間の親しくなるためのコミュニケーションをしました。
その後で参加者は再び好感度と性格的特徴について評価をしました。
結果:写真を見たときの印象が残る
参加者の下した評価を調べたところ、最初に写真を見たときの評価と直接会ったときの評価は一貫していることが分かりました。
つまり写真を見たときに性格が良いと思ったら、直接会ったときも良いと思うということです。性格が悪いと思ったときも同様です。
これは決して写真の女性の性格に要因があったわけではありません。人によって同じ女性に対して良い評価をすることもあれば悪い評価をすることもありました。
悪い部分に注目するバイアス
ではなぜ写真を見たときの第一印象が直接会った後も変わらなかったのでしょうか?
それは人間が最初に特定のイメージを持つとそれに適合する情報にばかり注目してしまうバイアスを持っているからです。
つまり初対面で「この人は性格が悪い」と思ったら悪いところばかりに注目し「やっぱり悪い人だ」と思ってしまうのです。
また写真を見て相手に良い印象を持った人は直接対面したときに友好的な態度をとる傾向がありました。それが相手の態度に影響した可能性もあります。
つまり好きな人には良い態度を取るのでそれが鏡のように返ってきて良い印象につながるということです。
珍しい情報を与えれば最悪な印象は変わる
では仮にあなたが好きな人に最悪な第一印象を持たれてしまい、その後も悪い部分にばかり注目されるバイアスを持たれた場合にはどうすれば良いのでしょうか?
それは珍しい情報を相手に提供するということです。
珍しいことは重要なことと認識するので記憶する
人間の脳は珍しいことを重要なことと認識するので記憶するのです。日常の出来事よりも旅行に行ったときの出来事のほうをよく覚えていることからも分かると思います。
これは人間に対する印象でも同じことがいえます。人前で悪い態度を取る人は珍しいので記憶に定着しやすいのです。
そしてその後に良い態度を取ってもその印象は変わりません。人前で良い態度を取るのは皆がしているので珍しいことではないからです。
脳が重要な情報ではないと判断して情報を書き換えないのです。
細々とした長所をどれだけアピールしても悪い印象は変わらない
初対面でムスッとしていた人が次に会ったときに笑顔で接しても悪い印象は変わりません。
そこに珍しさをプラスしなければならないのです。
そのために例えば自分の特技を活かしたボランティアをしているなどの情報を与えれば印象を良くすることはできるでしょう。
細々とした長所をアピールするよりも希少な情報を与えることを意識してください。
もちろん清潔感を持った見た目と落ち着いた自然なトーンで会話をするということも重要です。視覚と聴覚からの情報は会話の内容以上に大きな影響を与えるのです。
参考文献:Impressions Based on a Portrait Predict, 1-Month Later, Impressions Following a Live Interaction.