一緒にいるときでも彼氏がスマホばかり見ていると悲しいものです。
自分に興味がないのかとか、他の女性と連絡なくしているのではないかと不安になります。
中には「仕返ししたい」と思ってしまう人もいるでしょう。
彼氏のことを愛していれば、こうした感情が芽生えるのは自然なことではあります。しかし、その感情があまりに強いならあなた自身が愛着不安を抱えてるのかもしれません。
つまり、子供時代の親子関係が不健全であったために適切な自己肯定感が育っておらず、「彼氏に嫌われたのではないか」「捨てられるのではないか」と心配し過ぎたり、恋愛依存症になりやすい心理を持っているということです。
ファビングと恋愛関係
スマホをいじることに集中して、目の前の人や会話をないがしろにする行為を「ファビング(phubbing)」といいます。
「phone(電話)」と「snubbing(冷たくあしらう)」を組み合わせた造語です。
近年、ファビングが人間関係を損なうことが多くの心理学研究で示されています。
恋愛のパートナーからファビングをされたとき、どんな影響が出るかを調べたサウサンプトン大学のキャシー・カーネリー博士らの研究があります。
ファビングされたときの感情の記録
この研究では18歳以上の男女196人(平均年齢36歳)に毎日、以下の記録をつけてもらいました。
- パートナーからファビングされたか?
- ファビングされたときの感情
- 仕返しに自分もスマホを使ったか?
愛着不安が強い人ほど悪影響を受ける
これらの記録を分析したところ、まず分かったことはパートナーがファビングをした日ほど不安や怒りの感情が強まり、関係に対する幸福度も低くなるということでした。
また、この研究では参加者の愛着についても調べていますが、愛着不安が強い人ほどファビングをされたときに不安や抑うつ、自尊心の低下を感じやすいことも分かりました。
さらに、仕返しのために自分も同じようにスマホをいじりだす可能性も高い傾向にありました。
なぜ愛着不安が強いとネガティブな感情になりやすいのか
なぜ愛着不安が強い人ほどファビングされたときに、ネガティブな感情や行動が強く出るのでしょうか?
そこには「拒絶への不安」と「感情のコントロールの苦手さ」が関係しています。
拒絶への不安
愛着不安が強い人は、もともと「見捨てられるのではないか」「愛されていないのではないか」という不安を強く持っています。
そのため、パートナーの注意や関心が自分以外に向けられることに非常に敏感です。
ファビングは、まさに「自分よりスマホが優先されている」という状況のため、即座に拒絶や軽視のサインと解釈してしまいます。
それによって、「やっぱり大切にされていない」「自分は価値がない」という思考につながりやすくなります。
その結果、自尊心が低下し、ネガティブな気分も高まりやすくなるのです。
また、愛着不安の強い人は恋人からの承認や愛情に強く依存しがちなため、その関心が奪われること自体が心理的な脅威として作用しやすい点も影響しています。
感情のコントロールの苦手さによる仕返し
自分よりもスマホを優先されれば誰でも怒りやイライラが芽生えるものです。それでも多くの人はその感情を抑えようとします。
しかし、愛着不安の強い人は感情のコントロールが苦手なため、怒りや不安を抑えるよりも外に表す傾向があります。
つまり、一時的なストレス発散や不安解消の手段として「復讐」のための行動を取りやすいのです。それがファビングのやり返しにつながるのです。
また、潜在意識レベルでの「自分の存在を認めてほしい」「関心を取り戻したい」という欲求も影響しています。
仕返しはその手段の一つであり、「自分もスマホをいじることで相手に同じ気持ちを味わわせたい」「こうすれば相手も自分の苦しみに気づくはずだ」という期待を含んでいることもあります。
スマホばかり見る彼氏の心理
そもそも、なぜ彼氏は一緒にいるときでもスマホばかり見ているのでしょうか?
あなたのことが嫌いだからでしょうか?
そんなことはありません。スマホに依存しているのです。つまり脳がスマホを見たときに快感を覚えるようになっているということです。
SNSでもゲームでもスマホで提供されるアプリはランダムに通知がきます。
人間の脳というのはこの「ランダムさ」に依存するように出来ているのです。
ギャンブルを考えれば分かると思います。アタリがいつ出るか分からないからハマるのです。
スマホもいつ通知が来るか分からずに次のようなことを繰り返します。
- 通知が来てるかな?→来てなかった
- 通知が来てるかな?→来てた
- 今度はどうかな?ワクワク
こうしたことを繰り返すうちに、スマホを見ただけで「あの中にワクワクすることがある」と考え、脳内に快楽物質のドーパミンが出るようになり、たとえ彼女といるときであっても触れずにはいられなくなるのです。
ですから彼氏がスマホばかりで悲しくなっても、「自分の魅力がないからだ」などと勘違いしてはいけません。
「現代人なら仕方ないか」くらいに思っていたほうが精神衛生上は健全です。
回避型の彼氏とファビング
愛着不安と同じような問題として「愛着回避」があります。
これも子供時代の親子関係に起因するものですが、こちらはパートナーにべったりとくっつくのではなく、距離を置こうとします。心の内を読まれることが怖いからです。
このような愛着回避を持つ男性もよくファビングをします。
その理由として、たとえ恋人であっても親密になりすぎることに恐れを抱いているため、その防波堤としてスマホに触れる時間を持とうとしていることが挙げられます。
また、スマホを優先している姿を見せることで、自分のほうが立場が上であるということをアピールして、主導権を握ろうとすることもあります。
そしてこのようなタイプに執着しがちなのが、ここまで説明してきた愛着不安の強いタイプの人です。
もしあなたがファビングばかりされているのに、相手に依存しているのなら愛着不安を抱えていないか振り返ってみてください。
余談ですが相談に来ている人の話を聞いていると、回避型の人はスマホゲームにハマッている人が多いです。特にポケモンにハマッています。
ポケモンを育てることで心の中に残り続ける過去の幼い自分を育て直ししているのかもしれません。
純粋に面白いゲームというだけだとは思いますが…
参考文献:Carnelley KB, Hart CM, Vowels LM, Thomas TT. Attachment, Perceived Partner Phubbing, and Retaliation: A Daily Diary Study. J Pers. 2025 Aug 8.