「好きにすれば」と言うのは冷たいからではなく、回避型だから

回避型の彼についての相談
回避型の彼や好きな人との接し方が分からないという方はお気軽にご相談ください。回避依存症の男性との恋愛についての相談も承っております。
対面・オンライン・電話で対応いたしております。

喧嘩になると、いつも彼氏が「好きにすれば」と言って、そこで終わってしまう…。なんてことはないでしょうか?

話し合いの場面でも、特に意見を言われることもなく「どうでもいい」と流されてしまったり…

そんな彼氏に対し、「冷たい」と思っているかもしれません。

しかし、あなたの彼氏が「好きにすれば」と言ってコミュニケーションを切り上げてしまうのは冷たいからではなく、回避型だからかもしれません。

要するに恋人とさえ親密になりたがらずに、心の距離を置きたいタイプということです。

もしそうだとすると、今のままのコミュニケーションのパターンは危険です。破局につながりやすいです。

破局につながる最悪な「要求-撤退パターン」とは

夫婦や恋人に関する心理学研究において、関係を悪化させる非常に危険なコミュニケーションとされるものがあります。

「要求-撤退(Demand-withdrawal)パターン」と言われるものです。

これは一方が話し合いを求めている(要求)のに対し、もう一方がそれをはぐらかしたり、早々に切り上げようとする(撤退)ものです。

喧嘩のときに、彼氏が「好きにすれば」というのは、この「撤退」といえます。

このパターンで交流しているカップルは破局する確率が高いことが、いくつかの研究から分かっています。お互いに意見をぶつけ合って対立するより悪影響とされています。

そして、さらに危険なのが、ここに「攻撃(aggression)」が加わるパターンです。

たとえば、あなたが「話し合おう(要求)」と言ったとき、彼氏が「またその話?もう好きにしてよ(撤退)」と言ったとします。

それに対してあなたが「なんでちゃんと話をしないの!?」と感情的に責め立てるのが「攻撃」です。

これはかなり危険なパターンなので避けたいところなのですが、「好きにすれば」と言う彼氏と付き合っていると、苛立ってついやってしまいがちなのです。

彼氏が「好きにすれば」と言って撤退する理由

そもそも、なぜ彼氏は「好きにすれば」と言って撤退するのでしょうか?

その理由の一つとして、冒頭でも説明した、「回避型の愛着スタイル」(他者と心の距離をとりたがる傾向)を持っていることが挙げられます。

スペインのバスク大学などのチームが、175組のカップルを対象に行った研究があります。

この研究では、愛着スタイルと、喧嘩のときに見せる行動(無視したり、責めたりするかどうか)、そして現在の恋愛関係にどれだけ満足しているかを、それぞれ聞き取りました。

これらの回答を統計的に分析したところ、回避型の愛着スタイルを持っている人ほど、喧嘩や対立が起こったときに、「撤退」行動をとりがちということが分かりました。

そして、関係に対する満足度が低いという傾向も出ました。

さらに、「撤退」行動を取ると、パートナーが「要求・攻撃」行動を強める可能性が高いことも分かりました。

つまり、回避型の人が距離を取ろうとすると、パートナーは「なんで向き合ってくれないの?」と不安や苛立ちが生じ、責めたり怒ったりするようになるということです。

そして、この「撤退」と「要求・攻撃」の組み合わせが、カップル双方の満足度を下げるということも明らかになりました。

回避型が「好きにすれば」と言う心理

なぜ回避型の人ほど「撤退」傾向が強いのでしょうか?

その理由の一つは、感情を見せることへの恐れです。

回避型は対人関係への不信感を持っているため、自分の気持ちや意見を言うと、相手がそれを利用して、自分をコントロールするに違いないと思い込んでいるのです。「言質を取られた」と感じてしまうのです。

そのため、対立が起こった際には、正面から向き合うより、感情を閉じ込めて逃げたほうが安全だと考えるのです。

また、回避型の人は、相手の感情が伝わってくると非常に疲れるというタイプも多いです。

喧嘩や意見の対立は、感情のぶつかり合いに発展しますから、それによって疲弊するのを避けるために、撤退するのです。

つまり、回避型の人が喧嘩のときに「好きにすれば」と言うのは、無関心や冷たさからではなく、「コントロールされたくない」「疲弊したくない」という恐れや不安からくる防衛的な行動ということです。

どうすれば彼氏は向き合ってくれるのか?

あなたの彼氏が回避型であるがゆえに、撤退戦略を用いている場合、そこで問い詰めてしまうと、余計に意見を言わなくなってしまいます。

ではどうすれば良いかといったら「条件づけ」を変えてあげることです。

「好きにすれば」と言って撤退する彼氏は、そのまま会話を継続すると、感情をぶつけられて鬱陶しくなることを予測しているのです。

なぜなら、過去にそういう経験をしたか、あなたがそういうタイプだからです。

つまり、意見が対立しそうな雰囲気を僅かでも感じ取ったら、「面倒くさいことが始まる」と憂鬱になるよう、条件づけされてしまっているということです。

これを変えるには、あなたが意見を言う時に感情的にならず、冷静に話すようにすることです。それを繰り返すことで、条件づけを変えてあげるのです。

とはいえ、そもそも話し合う機会がないのだから、そんなチャンスはないという人もいると思います。

それなら、日常会話から変えてください。

撤退行動を取る回避型の人のパートナーというのは、普段からうざいほどに感情を込めて話すタイプであることが多いです。

日常のどうでも良いことまで感情的に話すのです。

たとえば、買い物をしたお店が混雑していたことを伝えるだけでも「んもうっ!お店がめー-っちゃ混んでてっ!」と無駄に抑揚をつけて話すのです。

相談に来ている回避型の人から、「彼女のこういう喋り方がウザくて会話する前から気持ちが滅入るんです」と言われることは、決して珍しくありません。「あるある」なのです。

ですから、まずはあなたと真剣に会話をしても感情は疲弊しないということを、普段の会話から印象づけてあげてください。

急に変えることは難しいですが、少しずつでも前に進むことはできます。

参考文献:Ione Breta, Itziar Alonso-Arbiol, et al. (2022). Avoidant Attachment, Withdrawal-Aggression Conflict Pattern, and Relationship Satisfaction: A Mediational Dyadic Model.