恋愛依存症の女性が彼氏と喧嘩した後にひどい暴力を受けたり自分のモノを捨てられたりすることは珍しくありません。
彼らは自分の思い通りにいかないことがあると許せませんし、自分を怒らせたことに対しても怒るので些細な出来事でも大きな復讐をせずにはいられないのです。
しかし恋愛依存症の女性はそれを理不尽な復讐だとは受け止めずに愛情の裏返しだと受け止めます。
「暴力を振るったら彼氏だって傷つくじゃないですか」「あのパソコンは私のですが彼氏も使っていたので捨てたら困るはずです」と彼氏を擁護します。
一部の恋愛依存症の女性に共通する特徴のひとつなのですが「彼氏が少しでも損をしていたらそれは復讐ではなく愛情表現なのだ」と強く思い込んでいることがあります。
しかし人間は自分が損をしてでも復讐をします。恋愛依存症者を利用するパートナーの復讐は愛情表現ではなく自分のための行為であるということを認識しなければなりません。
最後通牒ゲーム(ultimatum game)
心理学や経済学の実験で「最後通牒ゲーム(ultimatum game)」というものがあります。
このゲームは人間が自分の利益を放棄してでも復讐することがあるということを示してくれます。

被験者2人を提案者(proposer)と応答者(responder)に分けます。
提案者には主催者から100ドルが授けられます。それを受け取った提案者は分割する配分を決めることができます。いくらを応答者にあげるか決められるということです。半分ずつの50ドルでなくても良いのです。
いくら分けてもらえるかという提案を受けた応答者は「受諾」か「拒否」をする権利を持っています。
受諾すれば2人ともお金をもらうことができます。しかし拒否した場合は二人ともお金をもらうことはできません。100ドルは返さなければならないのです。
この選択は提案されたときに一度しか出来ないため「もっと私の分け前を増やしてくれるなら受諾しますよ」と言うことはできません。
つまり受諾者はいくらの提案を受けたとしても「受諾」することが最も得な選択ということになります。
しかし受諾者の中には自分がお金を受け取れる権利を放棄してでも拒否することがあるのです。
それは配分の割合があまりにも不公平だと感じたときです。50ドルずつの提案を受ければほとんどの人は受諾します。
しかし自分が30ドル未満しかもらえない場合は半分近くの人が拒絶するケースが多いのです。
つまり「自分がもらえる数十ドルを放棄してでも相手が報酬を得る機会を奪ってやる」という復讐の心理が働いたということです。
復讐のための訴訟
さきほど説明した最後通牒ゲームでは自分のお金が減るわけではないので復讐しやすいだけでは?と思うかもしれません。機会損失は発生しますが経済的損失は発生しませんからね。
しかし人間は自分が損をしてでも復讐をしたいという強い心理が生まれることが珍しくありません。
あるマンションのオーナーさんから家賃滞納をした住人に訴訟を起こして退去させたという話を聞いたことがあります。
私はその話を聞いたときにかなり驚きました。なぜなら日本は不動産の賃貸契約の中でも住居に関しては借主が圧倒的に有利だからです。
家賃滞納をしたからといって無理やり追い出したらオーナーが訴えられます。
なので訴訟を起こさなければなりません。しかも勝訴したからといって追い出して良いわけではなくさらに強制執行の申立をしなければなりません。
時間も費用もかかる上に滞納するような借主に請求できるケースは稀ですから損することのほうが多いのです。
それでも訴訟を起こすオーナーは少なくありません。なぜ訴訟までやったのか聞いたら「借主の態度が生意気だったから」と言っていました。
「どうせ追い出せやしないんだろ?」という態度が癪に障ったので訴訟を起こしたそうです。どれだけ滞納されても「必ず払いますから何とか待ってもらえないでしょうか?」と誠意を持って対応すればそこまではしなかったそうです。
ちなみにこのオーナーさんは時間とお金が有り余ってどうしようもないというわけではありません。しかも穏やかで誠実な人物です。それでも損失を出して復讐せずにはいられなかったのです。
「復讐は何も生まない」という人がいますが前提が間違っています。
復讐というのは何かを生み出すためにするのではなく失った部分を補修するために行う作業です。マイナスをゼロに戻すだけなのです。マイナスのままでは心にしこりが残り続けます。
恋愛依存症の女性がよく言う「本人も損失を被るのだから復讐ではなく愛情の裏返し」という認知のゆがみは変えなければなりません。
また恋愛依存症者が依存してしまうような男性は自分の恋人が復讐によって苦しんでいる姿に興奮するタイプも少なくありませんから余計に復讐への動機が強いといえるでしょう。