怖い夢ばかり見るのは気分の良いものではありません。起きたあともその恐怖が残っていることがあります。
しかしそのおかげで現実に恐ろしいことが起こったときに脳が対処してくれるかもしれません。
悪夢によるシミュレーション
なぜ夢を見るのかということについては科学的にはっきりとした理由は特定されていません。
記憶を整理するためだとか昼間の現実と空想の仕分けをするためなどと言われることがあります。
フロイトは潜在意識の願望が形を変えて現れると言いました。
今も夢の内容からその人の奥底にある感情を読み取ろうとする実験を行っている人もいます。
夢にも色々とありますが怖い夢については現実で恐ろしいことが起こったときに対処できるようにするために見ているのかもしれません。
事前に脳内で反応させておくことで慣らしておくのです。シミュレーションをして訓練しているようなものです。
夢と脳の実験
ジュネーブ大学のヴァージニー・スターペニッチらの研究グループは怖い夢が脳に及ぼす影響についての実験を行いました。
被験者を睡眠中に何度か起こしどのような夢を見たか質問しました。
その結果、夢の内容によって脳内で反応する場所に差があることが分かりました。
怖い夢を見たときに活性化するのは感情の評価に関わる島皮質と、危機に直面したときに体の準備をさせる前帯状皮質でした。
つまり寝ているときも起きているときも恐怖に直面したときに反応する部分は同じということです。
別の実験では被験者に一週間に渡って夢と感情についての記録をつけてもらいました。
その後で「ネガティブな写真」と「普通の写真」を見せどのように脳が反応するかを観察しました。
その結果、怖い夢を長く見た人ほどネガティブな写真を見たときの感情に関連する脳部位の反応が小さいことが分かりました。
また感情に強く関連する扁桃体の働きを抑制する前頭全皮質は活性化されました。
これらの実験から怖い夢を見ることで現実にそのようなことが起こったときに脳が対処できるようになるということが分かります。
死ぬ夢は新しい自分に生まれ変わりたいという願望?
怖い夢を見ることでシミュレーションを行っているとしてもそれがなぜ起こっているのかは不明です。
現実で何か起こりそうな状況だからなのか、定期的なメンテナンスのようなものかは分からないのです。
トラウマの影響なども考えられます。
どんな理由にせよ悪夢が現実の大変な状況に脳を慣れさせる効果があるという結果は出ています。
これは心が壊れないためにも大切な機能と言えるでしょう。
しかし慣れることによって現実の悪循環から抜け出せなくなってしまっては問題です。
感情の対処が出来たとしても幸福にはなれないのです。
怖い夢によって対応力をつけた脳はより良い人生のために使わなければなりません。
余談ですが自分が死ぬ夢は新しい自分に生まれ変わりたいという潜在意識の表れと分析されることもあります。