会話中でも相手の顔を見ずにスマホを弄り続けることを英語で「ファビング」と言い人間関係を壊す行動として問題化しています。
スマホばかり見ているのは失礼だと分かっているのにそれをやめられないのは依存といえます。
このような異常なほどのスマホへの依存の根底には回避依存症があるかもしれません。
スマホばかり見ている回避依存症の彼氏
恋愛依存症の相談を受けていると「(回避依存症の)彼氏が常にスマホばかり見ている」という人が多いことに気づきます。
会話中やトイレ、お風呂に入るときまで起きている時間は常にスマホを手放さないということも少なくありません。
動画サイトやSNS、LINEなどやっていることは様々ですが異常なほどスマホを気にしてしまっている回避依存症は多いです。
なぜ彼氏はスマホに依存するのか?
他者に束縛されることを恐れる回避依存症の彼氏がスマホばかり気にしていることに疑問を持つかもしれません。
しかしネット上の付き合いというのは彼氏にとっては丁度良いものと考えることもできます。
回避依存症が他者と親密になることを避けるのはその息苦しさもありますが潜在意識では見捨てられることの恐れを感じていることもあります。
親密になってから見捨てられるくらいであれば最初から近づかないという判断をするため他者を遠ざけるということです。
このような心理を持っている人はネット内での交流に心地よさを感じることがあります。
直接会っていないので息苦しさを感じることはありませんし、ネット上では相手もいくらでも取り繕えますから自分を分かってくれるような錯覚にも陥るからです。
そして自分の期待通りのコメントやイイネをしてくれることで一時的な高揚感を感じるのです。それに依存することで常にスマホを確認しないと落ち着かなくなってしまうということです。
またYouTuberなどに一方的なつながりを感じて彼らの動画に依存するということも考えられます。
家庭環境とスマホ依存の関係
回避依存症になる原因は家庭環境にあるとされています。
適切な愛情を受けなかったことで愛着不安が生まれ大人になった後も他者と健全な関係を築けなくなるのです。
ヤシャル大学のエムラ・エミルテキンらの調査によって家庭環境とスマホ依存の相関が明らかにされています。
幼少期に精神的虐待や身体的虐待を受けていた人はスマホに依存しやすく首や手が痛くなるほど長時間にわたり使い続けてしまうこともあると分かったのです。
FOMO:取り残される不安
回避依存症の彼がスマホばかり見ている理由としてもう一つ「FOMO」が考えられます。
FOMOとは「Fear of Missing Out」の略で日本語では「取り残されることの不安」となります。
より具体的には「自分の知らないところで友達同士が集まっていたらどうしよう」とか「話題になっていることを自分だけ知らなかったらどうしよう」という不安のことです。
このような不安が強い人ほどスマホに依存しやすいことがパレルモ大学のジャンルカロ・ココらの研究で判明しています。
自分だけ置いてけぼりをくらう不安というのも愛着の問題を抱えている人によく見られる傾向です。
本当の友達はネットで知り合った相手だけ
本当の友達はネットで知り合った相手だけという回避依存症の人も珍しくはありません。
しかし相手が自分の思うような反応をしてくれなかったり、直接会ったときに想像と違う性格だったときに回避依存症者は裏切られたと感じます。
そして烈火のごとく怒り狂ったり完全に関係を遮断するのです。
あなた自身も回避依存症の彼氏との出会いがネットだったかもしれません。
ネット上でやり取りしていたときはあなたを運命の人かのごとく扱っていたのに何度か会っているうちに対応が冷たくなるというのも回避依存症の彼氏によくあることです。
あなたもスマホに依存するリスクが高い
冷めた彼氏はあなたと会話をしているときもスマホばかり見るようなります。
冒頭で説明したファビング(目の前の相手を無視してスマホばかり見る)を行うのです。
心理学の研究ではカップルの一方がファビングをすることで愛情が冷めやすくなることが分かっています。
ですからあなたの愛情は冷めはじめるはずです。しかしそうはなりません。
なぜなら回避依存症の彼氏に惹かれているあなたも何らかの愛着の不安を抱えているからです。
そしてあなたも「彼氏から連絡が来ているのではないか?」「彼氏が何かツイートしているのではないか?」と気になってしまいスマホを手放せなくなるのです。
今回紹介した実験の通り回避依存症に限らず愛着不安を持っている人はスマホに依存しやすいですからあなたもスマホ依存のリスクは高いといえます。
スマホとSNSは依存しやすく設計されている
スマホとそこで使用されるコンテンツは人間を依存させるように設計されています。
イイネやコメント機能による他者からの反応があると脳の報酬系回路が活性化して快感を覚えます。
さらにこれらの反応は規則性なくランダムに発生しますから「何か反応があるかもしれない」と何度も確認しなければ落ち着かない心理を作り出します。
また動画サイトもSNSも自分が何かしなくとも興味のありそうなコンテンツをオススメに表示する機能がありますから受動的かつ連続的に快感を与え続けてきます。
頭を使うことなく快感を得ることができれば人間は簡単に依存するのです。
ですから現代の社会環境に鑑みると健全な心の状態の人であっても何時間もスマホを見てしまうことは自然な流れかもしれません。
軽めの依存であれば会話中にスマホばかり見ていると失礼であると判断して我慢することができます。
しかし重度の依存状態になるとスマホを見ていない時間はずっと不安になってしまうのです。
スマホ依存から抜け出す
ただでさえ依存させるように設計されたスマホやそのコンテンツですから愛着不安を抱えている人は余計にそのリスクが高いといえます。
スマホ依存から抜け出すためには上記のメカニズムを意識しながら使用時間を減らしていくことが必要です。
お酒を飲みながらアルコール依存を克服できないのと同じように元を断たなければスマホ依存からは抜け出せないのです。
設定した時間が経過するまで鍵を開けられないケースなどもありますから活用すると良いでしょう。
スマホが一時も離せないほどに依存しているならその元を特定する必要もあります。
恋愛依存症が元となっているのならまずはその克服をしてください。
回避依存症の彼氏のスマホ依存は本人が変わろうとしない限りは抜け出すことはほぼ不可能といえます。
他人を変えようとするよりも自分の依存体質を克服し同じような泥沼に陥らないようにすることが重要です。
参考文献
・The role of childhood emotional maltreatment and body image dissatisfaction in problematic smartphone use among adolescents.
・Examining bi-directionality between Fear of Missing Out and problematic smartphone use. A two-wave panel study among adolescents.